2011年6月4日土曜日

特別展「写真家・東松照明 全仕事」 を観てきた

名古屋市美術館で開催されている「写真家・東松照明 全仕事」という展覧会へ行ってきた。
東松は愛知県名古屋市出身で、まだ現役の写真家である(現在は沖縄在住)。


美術館HPに掲載されているこの回顧展の概要は以下の通り。
   現代日本を代表する写真家・東松照明(1930- )は、写真というメディアの記録性を活かしながら、 敗戦からのわれわれ日本人の精神の在り処をその深奥から浮かび上がらせて見せます。1930(昭和5)年に名古屋市東区新出来町に生まれた東松は、20歳の時に写真に出会い、愛知大学を卒業後、上京し岩波写真文庫のスタッフ・カメラマンとしてそのキャリアを始めました。戦後の日本が抱える矛盾や問題を、従来の報道写真とは異なる手法で提示するその表現は、日本の写真の“ヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)”としてはやくから注目されました。「被爆」の精神的葛藤を追及し、写真家のライフ・ワークともなった<長崎>シリーズ(1961~)。占領と独自性が屹立する沖縄の精神性を注視した「太陽の鉛筆」(1975)。現在も継続して撮影され続けているこれらの作品群は、歴史や時間の経過はもとより、観る者に「いま」を強く意識させる、優れた“叙事詩”へと結実しています。 今回の展覧会は、60年に及ぶ写真家・東松照明の表現の集大成を見せる本格的な回顧展です。  どうぞご期待ください。



本展は東松照明の「全仕事」を振り返る回顧展である。
愛知大学在学中に写真撮影を開始したとのことで、
そのあたりの作品から現在の作品までをテーマに分けて展示している。

展示構成は次の通り。
1.記憶の肖像、廃墟の光景
2.占領/アメリカニゼーション
3.投影ー時代と都市の体温
4.長崎ー被爆・記録から肖像へ
5.泥の王国
6.太陽の鉛筆ー沖縄・南島
7.“他者”としての日本への回帰ー京・桜
8.“インターフェイス”ー撮ることと作ること

今回は展示作品数が多く(約550点)、1階・2階と地下1階の一部の展示室も使用している。
私が行った日にたまたまボランティアによるギャラリートークが開催される日で、
到着したときに丁度始まっていたので解説を聞くことにした。
ギャラリートークに参加するのは初めてだったが、
これはいいと思った。
それは、東松照明の作品についてより深く理解ができる内容だったからだ。
東松の作品は戦後の日本(敗戦・占領・アメリカ化・被爆地長崎・米軍基地・沖縄)をテーマにしており、
当時の時代背景を正しく理解していないと作品の本質を理解できないと思う。
ギャラリートークを聞くことでそれが少し可能になった。
もちろん、解説を聞いただけでは正しく理解したとは言い切れない。
帰宅後に自分なりに学習することも必要だし、
日頃からの研鑽ももちろん必要だ。

美術品とは言え、作家の発するメッセージを理解するためには
観覧者の側もそれなりのレベルになっている必要がある。
そう感じる企画展だった。
写真の展覧会は久しぶりだが、
今まで観た中では結構充実していてよい展示内容だったと思う。

0 件のコメント: