2012年3月20日火曜日

講演会「戦いと城の考古学」を聞いてきた(みはらしネット会員限定企画)

名古屋市南区にある見晴台考古資料館で
「みはらしネット」の会員限定の講演会が開催されたので行ってきた。
講師は元見晴台考古資料館学芸員で某大学教授のS氏。
テーマは「戦いと城の考古学」だ。
この先生は子供の頃からお城が大好きで、
それが今にまで続いているそうだ。
研究テーマももちろん城。
今回は城跡を考古学視点から鋭く突いた面白くもあり、
驚愕するような話もありの充実した内容だった。

特に印象に残った点は、
現在各地でお城(天守閣や城郭など)が復元されているが、
実際にあった城とは全く異なるものを建てているところが少なくないと言う点。
愛知県内の某城など本当は天守閣が無かったのに、
天守閣のある城の方が見栄えがいいという理由で
史実に基づかない復元をしてしまったことを嘆いていた。
また、弥生時代の巨大な集落遺跡である某県某遺跡についても、
実際はそうなっていなかったはずの防御施設を復元し、
誤った歴史を提示していると紹介した(S氏はこれらのことについて論文を発表し、
該当施設の担当者に質問をしているらしいが、明確な回答は貰えていないようだ)。
各時代の防御施設・防御城郭の遺構の理解が決定的に間違っているから
こういうことになる、との持論を展開した。

それと、もう一つ印象に残ったのは、
日本の城郭遺跡からは意外と遺物が出土しないということ。
これは、戦いの後にきちんと片づけが行われていたり、
土民などによる持ち出しが行われたためとのこと。
ただ、江戸時代初期にキリシタン一揆の
島原の乱の舞台となった原城跡からはおびただしい遺骨が出土するという。
実際に写真も見たが、
多数の人骨が折り重なって出土していた。
これは、戦いの末期にその場所に追い込んで一気にせん滅したか、
あるいは戦いの後にそこへまとめて埋めたかどちらかだろう。
中には首の無い遺体もあることから、
戦いの後にそこへまとめて埋めたものと思われる。
出土する遺骨には骨に刀傷があるものが多数あったそうで、
いかに凄まじい戦いだったかが分かる。
原城跡の紹介部分は別として、
他の話の大部分は誤った認識・解釈による復元をしないで欲しいというものだ。
実際には無かった天守閣を造ったり、
これでは防御機能は無いと思われるような柵や堀を造るということだ。

私は専門家では無いからとやかく言える立場にはないけれど、
S氏の説は正しいように感じる。
現在はまだ学者間では意見の相違が大きく、
いろいろな問題も多いために(S氏は「大人の都合」と表現)今の状態のままとなっている。
どの説が一番正しいか・・・早く正しいあるべき姿に復元するようになって欲しいと思う。

2012年3月18日日曜日

熱田神宮能楽殿の現在の様子


2006年10月に閉鎖された熱田神宮能楽殿。
名古屋能楽堂ができるまでは、名古屋地域における能楽の中心施設として
長い間大変重要な舞台だった。
現在活躍中の能楽師の多くはここが初舞台だという人が多いはずだ。
私が稽古に通っている笛の流派の現家元もここが初舞台だという。

閉鎖の理由はいろいろ噂されているが、
今はそれよりこの舞台がその後どうなっているのかが問題だ。
閉鎖するときは、三重の皇學館大学が購入すると言われていた。
しかし、諸般の事情によってこの話は白紙に戻り、
その後この舞台についての話は一切聞かなくなった。
そこで、熱田神宮へ行ったついでに
どうなっているかをチェックしてみることにした。

もしかして取り壊しされていないかと心配したが、
建物はちゃんと存在していた。
が、びっくりな状態だった。
それは、どこかの建設工事の現場事務所になっていたからだ。
熱田神宮内で何か作っているのだろうか。
建物の前には足場資材がうず高く積まれ、
職人さんが出入りしている。
もちろん、中へ入れるような状況ではない。
内部はどうなっているのだろうか・・・。

実は、能管の仲間で熱田神宮能楽殿を見学してみたいと考えていた。
でも、この状況では・・・。

私の友人にお店を経営している人がいて、
その店には熱田神宮の職員がときどき来ていると聞いた。
そこで、友人に頼んで能楽殿のことを聞いてもらったところ、
「今は倉庫兼事務所として使っているから入れない。見学なんて絶対無理!!」と言われたという。
やっぱり、今は工事の現場事務所として使われているのだ。

建物はともかく、あの舞台があのまま朽ちていくのは惜しい。
あの大きさだと個人での入手は無理だし、
どこかの団体なり自治体なりが能舞台を建設するときに引き取ってもらえるのが一番なんだが・・・。
現在、名古屋城の本丸御殿を再建中だが、
元々本丸御殿内には能楽殿があったと聞く。
そこへ組み込んでもらうとか・・・無理かな。
誰か引き取り手が現れることを切に祈る。