2018年2月4日日曜日

伊勢木遣りと伊勢音頭について

式年遷宮の神領民側の行事の際には必ず唄われる伊勢木遣り。
これは伊勢音頭の原型となったものらしく、そこかしこに伊勢音頭と同じような歌詞とか言い回しがある。
「めでためでたの若松様よ」とか
「伊勢は津でもつ、津は伊勢でもつ、尾張名古屋は城でもつ」など。
1人が木遣りを唄い、その他は合いの手を入れる部分で唄う(それを「囃子」と言うらしい)。
木遣りは各町内ごとに練習して伝承しているが、地区によって少しずつ違うようだ。
また、水揚げ木遣りなどバリエーションもある(陸曳きする町内と川曳きする町内によって木遣りも違ってくる)。

唄い始めの囃子は、私が参加させてもらっている町内・奉曳団では
「ソリャサーイはアリャリャリャリャリャ ヨーイソーコー ヨーイソーコーセー」
と唄うけど、
後半の部分は本当は「ヨーイトコー ヨーイトコセー」と唄うのが正しいと思われる。
他の町内ではそのように唄っているようだし、
善所伊勢=ヨイトコセだから「ソコ」だとちょっと違うし。
音が似ているから伝承の過程で少しずつ変わってきたのだろう。

しかし、伊勢木遣りにしろ伊勢音頭にしろ、全国各地にかなり広まっていると思われる。
他県の祭礼などでしばしば「あれ?似てる」と思う歌を耳にするからだ。
お伊勢参りが流行したのは江戸時代中期以後。
それだけお伊勢参りが全国的に流行して伊勢の文化も各地に伝播したということだ。

メロディは違っても似た歌詞の唄が全国各地に結構ある。
歌詞は基本的にめでたい内容だし(そうでないものもあるけど)。
我が地元はかつては港町で、伊勢との航路があった。
その時代に伊勢木遣りや伊勢音頭が伝播したようだ。
今でも亀崎潮干祭で唄われる伊勢音頭はメロディーこそ随分と変わっているが
歌詞は本家とほぼ同じ(こちらで独自に作った歌詞も多数ある)。
それと、祭の日の朝に行われる棒締めの際に唄われる「棒締め音頭」も伊勢木遣りと似た言葉が使われている(「ヤウトコセ」「ヨイヤナ」など)。
そもそも棒締め音頭と言われているけど実際は木遣りみたいなものだし。
伊勢の文化は我が地元へも多数もたらされていることが今でもわかる一例だ。

「ヤットコセ ヨイヤナ」という部分は伊勢音頭でも使われているけれど、
実はこれは太古の昔から伊勢に伝わる御霊歌が基になっているらしい(もちろん木遣りや伊勢音頭より成立が古い)。
→彌長久(いやとこしえ) 吉哉な(よいやな)
亀崎では棒締め音頭で唄われる「ヤウトコセ」は「ヤー運徳生」だと言われているが、
この言葉が伊勢からの伝播とすると亀崎説は違っている。
いずれにしても祭礼ということでめでたい言葉を使うというところに変わりは無い。
ちなみに伊勢音頭の「ヤートコーセーノヨーイヤナ アララ コレハイセー」の後半の部分は
「安樂樂(あらら)是者伊勢(これはいせ)」だそうだ。

先日伊勢市の河崎というところにある「河崎商人の館」というところへ行き、
係の方からどこから来たのかを聞かれたので「半田市から来た」ことを伝えたところ、
伊勢と半田はかつて海運で結ばれていたと言われ、とても喜ばれた。
やっぱり伊勢で歴史を勉強している人はみんな半田市を知っているんだな。