2012年4月22日日曜日

マラソンのオリンピック代表選考について

今年はオリンピックイヤーだ。
先日、水泳の代表選考会が行われ、
各種目の代表が決まった。
先月は男女マラソンの代表が選考された。
ここで、ずっと前から疑問に思っていることを述べたい。
なぜマラソンは選考会が3回(+世界選手権)もあるのか。
このせいで非常に釈然としないことが起こっている。

マラソンは2時間以上かかる長い試合だ。
当日の気象条件やコースが少し違うだけでタイムに大きく差が出る。
このような競技の代表を決めるのに、
条件が違う複数のコースでなぜ代表選考を実施するのか?
多くの人が疑問に思っていることだろう。
陸連の見解は
「よりメダルの可能性が高い選手を見極めたい」だそうだが、
果たしてそうなのだろうか?

この制度で釈然としない理由の一つに、
最初の選考会でいい結果が出せなくても、
次の選考会で良い結果が出せたら代表として選考される可能性があるというところだ。
いわゆる「追試」というやつ。
オリンピックの本番は一発勝負、日にちもずっと前から決まっている。
それなのに、代表選考会を何度も戦って、
追試でようやく代表に選ばれる選手が一発勝負のオリンピックで勝てるかどうか。
非常に疑問だ。
水泳同様に代表選考会の一発勝負で代表を選ぶ方がフェアだ。
選考会に調子を合わせられない選手はオリンピック本番でも調子を合わせられない。
一発勝負に弱い選手とも言える(怪我の場合を除く)。
世界レベルの勝負は厳しいのだ。

その点、水泳は単純明快だ。
一発勝負の代表選考会を行って、
各種目上位2名(ただし、オリンピック標準記録を突破している場合のみ選考される)が
代表となることができる。
水泳がなぜこのような方式にしたのか・・・。
それは、かつて女子自由形の千葉すず選手にスポーツ仲裁裁判所に提訴されたという苦い経験があるからだ。
千葉選手はオリンピック直前の日本選手権でオリンピックA標準記録を突破して優勝したのに
代表に選考されなかったため代表選考の経緯に疑義があるとして提訴した。
結局代表にはなれなかったが、日本水連はこれを教訓に単純明快な代表選考方式へとシフトした。

また、スポーツ大国アメリカ。
アメリカの陸上競技の選考は一発勝負の選考会で決まる。
私の現役時代はあのカール・ルイスの現役時代と重なる。
カール・ルイスが事実上の世界トップアスリートとなった時代でも、
実は世界記録はルイスではない時代が結構長かった。
ロサンゼルスオリンピック(1984年)の際はカルビン・スミス(アメリカ)が
男子100mの世界記録保持者(1983~1988年)だった。
しかし、一発勝負の選考会でスミスは4着に敗退し、
かろうじて四継メンバーでロス五輪に出場できたくらいだ(ちなみに、
彼はその次のソウル五輪には100mで出場して銅メダルだった)。

日本のマラソン代表選考はなぜ一発勝負を避けるのか・・・。
私の想像だが、
各マラソン大会のスポンサーの意向や広告収入などの事情もあると思われる。
今や一流スポーツ選手を目指すにはお金がなければ無理だ。
競技会もお金が無いと運営できない。
そういったしがらみに縛られて一発勝負の代表選考会を実施できないのだろう。
また、選手が所属する実業団の意向も無視できないのかも知れない。
非常に残念だ。

マラソンの選考には直接関係ないが、
陸上競技の代表選考も規準が甘い。
水泳は厳しい規準を設けているが陸上は水泳ほど厳しくない。
だから、「陸上だけ」と白い目で見られているのは確かだ。
水泳の場合だと代表に選ばれなかった選手でも入賞が可能なレベルの選手は多いのに、
陸上は入賞さえ危うい選手が代表に選ばれている。
競技が違うから規準が違って当然という意見もあるだろうが、
私は陸上競技についてはもう少し規準を厳しくしてもいいと思っている。

今や男女ともに日本マラソン界は世界レベルと大きく差がついてしまった。
多くの選手が所属している実業団や大学が駅伝重視になってしまったことも理由の一つだと思う。
駅伝の練習ばかりしていてはマラソンは強くならない。
今のレベルではメダルどころか入賞できるかどうか。
選手は一所懸命練習しているから特に問題にはしない。
問題なのは陸連の姿勢だ。
代表選考についてはもっと単純明快にしてもらいたい。