2011年10月31日月曜日

映画「グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独」を観た


グレン・グールドのドキュメンタリー映画を観てきた。
グールドの弾くピアノは好きだけれど、
その生涯についてはあまり知らない。
だから、この映画を観て非常に多くのことを知った。
名古屋のシネマテークで上映されていたので前売りチケットを買って観に行った。

グールドは20世紀を代表する大ピアニストだ。
アメリカの惑星探査計画の人工衛星「ボイジャー」に、
未知の生命体へのメッセージの一つとして、
グールドが弾いたバッハの平均律の一部が録音されたレコードが搭載されたことは
あまり知られていないかもしれない。
地球代表として搭載されたのだから、そういうレベルの人ということだ。

この映画を観て、
グールドの非常に人間くさいところがよくわかった。
人間嫌いで友人を多く作らなかったと言われていたが、
その数少ない友人が登場し、
グールドの様子をリアルに語った。
友人でないと語れないことばかりだ。
独身で過ごしたということは知っていたが、
好きだった人や同棲していた人など3名が証言者として登場し、
生の声でグールドを語った。
グールドのノンレガード奏法はトロント音楽院の教授の指導により
獲得した技術だということもわかった。
同じ教授について習ったという人も証言者として登場。
その人が弾くピアノもノンレガート奏法だった。
私はこの弾き方が好きなので、
とても心地よく耳に響く。

メジャーデビューしたのはバッハのゴールドベルク変奏曲だが、
レコード会社はバッハのインベンションとシンフォニアで
デビューさせようとしていたことも分かった。
これはヒドい。
いくらなんでも子どもの練習曲でデビューさせるなんて・・・2声と3声・・・
でも、このときはグールドが納得せずにゴールドベルクに決まったとか。
結局この演奏が世界中の人たちをビックリさせ、
その後バッハ弾きとしての演奏家人生を歩むことになる。

グールドが長く心の病に侵されていたことも分かった。
晩年(と言っても50歳だが)にゴールドベルグ変奏曲を再録音したときの映像があるが、
この年齢でこんなに老けているのは何故だと思っていたが、
実は心を病んでいたのだ。
しかし、それでもなおあの素晴らしい演奏をするとは・・・
やはり世界一のピアニストだったんだと改めて思った。

心の病気がなければこんなに早く亡くなることもなかったと思う(死因は脳溢血)。
彼の演奏はいつまでも残り、
一般的な解釈とはかなり異なった演奏として永遠に異彩を放ち続けるだろう。