2011年7月2日土曜日

学芸員の資格を文部科学省に申請

 学芸員の資格を取得するための単位が揃ったため、
文部科学省へ申請した。
昨年からの1年計画で予定通り単位が取れたためだ。

学芸員の資格を取得する方法は大きくわけて2つある。
一つは学芸員課程がある大学へ入学し、
必要単位を全て履修・単位取得するというもの。
もう一つは文部科学省が毎年1回行う学芸員資格認定試験を受験し、
合格するというもの。
私が通っていた大学には学芸員課程が無かった(今はある)ので、
後者の文部科学省の試験を受験するという方法を取った。

文部科学省で受験するには受験資格をクリアしていなければならない。
それは博物館法施行規則で規定されており、
下記の法五条一~五号のいずれかに該当している必要がある。


博物館施行規則
第五条 次の各号の一に該当する者は、認定試験を受けることができる。
一 学士の学位を有する者
二 大学に二年以上在学し、六十二単位以上を修得したもので三年以上学芸員補の職
(法第五条第二項に規定する職を含む。以下同じ。)にあった者
三 教育職員の普通免許状を有し、三年以上教育職員の職にあった者
四 五年以上学芸員補の職にあった者
五 その他文部科学大臣が前各号に掲げる者と同様以上の資格を有すると認めた者


私は一号と四号に該当するが、
四号の方が有利なので四号受験者として受験した。
理由は博物館実習が免除になるからだ。

大学卒という資格で受験する場合は一号受験者となるが、
この場合は合格後に一年間学芸員補の職の職務に従事した後に試験認定合格者となる。
だから、筆記試験に合格してもそのまま「合格」にはならないのだ。
具体的には、「合格証書」の裏面に「博物館法施行規則の規定による学芸員補の職の職務に従事した経験を
当該博物館から『職務証明書』等で発行してもらい合格証書と一緒に保管し、
資格があることを証明したい相手方(採用試験等)に提示すること、となる。
四号受験者は五年以上の実務経験があるので実習は免除というわけ。
だから、私は筆記試験さえ合格すれば資格が取得できるのだ。


資格を取得するためには必須科目4科目全部と、
選択科目から2つの併せて6科目合格する必要がある。


・必須科目(下記科目の全科目)
生涯学習概論
博物館学
視聴覚教育メディア論
教育学概論

・選択科目(この中から2科目選択)
文化史
美術史
考古学
民俗学
自然科学史
物理
化学
生物学
地学


学生時代に取得した単位や
所持している免状・資格・実務経験などによって科目試験を免除(合格扱い)される場合がある(文部科学省に申請して認定される必要がある)。

→試験科目の免除
教職課程の「教育原理」の単位所持・・・教育学概論が免除
図書館司書資格所持・・・生涯学習概論が免除
社会教育主事所持・・・生涯学習概論が免除


私の場合は免除になる科目が4科目(生涯学習概論、教育学、民俗学、生物学)あったので、
あと残りは必須科目2科目(博物館学・視聴覚教育メディア論)だった。
それを受験して合格すればよいのだが、
その中で「博物館学」は実は4科目に分かれるもので、
博物館概論・博物館資料論・博物館経営論・博物館情報論から構成される。
しかも、博物館学の試験は筆記以外に口述試験(面接)がある。
この科目は試験範囲が広くて面接もあるからちょっと厳しい感じだ。
そこで、博物館学は放送大学で資格を取得して単位申請することにした(放送大学は通信制の大学)。
残り1科目の視聴覚教育メディア論は文部科学省へ試験を受けに行くことに。
試験は11月中旬の平日(大抵月~火)に東京で行われる。
全ての科目ともに記述試験だ(マークシートではない)。
早速試験勉強をしようと思ったが、
厄介なことに視聴覚教育メディア論というタイトルの本が見当たらない。
学芸員課程を開講している大学のシラバス等を見ると、
大抵教員が作成したレジュメを使うとある。
そもそも、視聴覚教育メディア論って何を学習する科目なのが明確でない。
視聴覚教育論なら分かるが、視聴覚教育メディア論って・・・
視聴覚教育で使うメディアについて論ずる科目なのか?
何でも「○○論」というタイトルにすれば学問らしい響きになるが、
どうも釈然としない。
何を読んで勉強したらいいのか・・・。
文部科学省のHPを見ると前年度の試験問題が公開されているので見てみたが、
どうも一筋縄ではいかない感じだ。
ネットでいろいろ調べまくって、
玉川大学出版部が発行している図書「視聴覚メディアと教育」<ISBN:9784472403033>
がテキストとして使えそうな感触を得た。
でも買うのはもったいない気がしたから(定価1,995円)、
愛知教育大学の図書館で借りてきた。

文部科学省へ受験の申請をするのは例年6月1日~8月上旬の間だ。
詳細は文科省ホームページで告知される。
この時期を逃すと来年度まで待たなければならないから注意が必要だ。
と同時に、他大学(放送大学)などで単位を取得する計画の人は
前期のうちに大学へ入学(科目等履修生)手続きしておく必要がある。
私は昨年のこの時期に文部科学省への受験申請(免除科目は免除申請を併せて行う)をし、
放送大学で博物館学の科目を履修するために入学手続きを行った(後期入学)。

放送大学では博物館学に相当する科目が
「博物館概論」「博物館資料論」「博物館経営・情報論」の3つに分かれていた。
これらの単位が全部取得できれば博物館学としての単位認定を受けられる。
私は10月1日からの入学(選科履修生)で、翌年1月の試験で全科目の合格を目指す計画でいた。
放送大学の学習形態は、
その名の通り放送される講義を視聴するというもの。
CATVかスカパーで放送大学のチャンネルを契約すれば家のテレビで授業の様子を観ることができる。
我が家はそんな契約はせず、
愛知学習センターから講義のDVD(科目によってはCD)を郵送で借りて
自宅で視聴した(通信教育のための郵送料は格安)。
郵送では1回につきDVDが2枚までしか借りられないから計画的に借りて観ていくことが重要だ。
各県には学習センターが開設されていて、
そこへ行けば貸出することなくDVDを視聴できる。
みんなまじめに視聴しているから
家だとだらけてしまうという人は学習センターに行くとよい。

1科目あたり15時間分のDVDがあるから
3科目で45時間。
それをちゃんと観て、テキストで勉強して、
12月上旬までに課題を提出して合格しなければならない。
課題が合格しないと1月の単位認定試験が受験できないからだ。
これは社会人にとっては思いのほか厳しいスケジュールだ。
DVDを観ている時間がなかなか取れないからだ。
たった3科目でもこんなに大変だから、
正科生として入学している人はかなり大変だ。
とても4年では卒業できないだろう。
私は何とか期日までに課題を提出し、
めでたく単位認定試験も受験できて単位を取得できた。

個人的な印象だが、
博物館学の科目は理論というより実践中心だ。
教職課程や図書館司書課程と違って理論的な部分がかなり少ないので
ん?と思うところが多々あった。
それに、実際は自分の専門分野のこと以外は分からないのに
「学芸員」という一つの資格で
歴史系博物館・理化学系博物館・美術館・資料館の類・動物園・植物園・水族館など文系理系と
かなり幅広い施設をカバーしている点も妙だと感じる。。
私は考古学が専門となるので必然的に歴史系博物館しか勤務はできないが、
資格の上では「考古学が専門」とは書いてないから
どこでも採用試験を受けられる(試験に受かることが必要だが)。
教員免許なら小学校以外はすべて教科ごとの免状になっているから、
免状が無い教科で採用試験を受けることはできない。
学芸員資格も自分の専門分野を明確にして資格にもそれを明記する必要があると思う。

そもそも、こんなに簡単に学芸員資格が取れていいの?という思いも・・・。
教職課程や図書館司書課程はもっと大変だったからだ。
まあ、私は偶然免除科目が多かったのかもしれないが、
う~ん・・・という感じだ。
大体、教員免許も図書館司書の資格でも、
実は意外と簡単に取れる(と思っている)。
だから、この免許や資格を持っているからと言っても専門家とは言い難いレベルだ。
実務を通じてスキルを上げていく必要がある。
教員は多くの生徒を抱えて非常に厳しい環境に置かれるから必然的にスキルアップしていく環境にあるが、
図書館司書や学芸員は自分の生徒がいるわけではないから、
どうしてもスキルアップのペースが鈍くなる。
利用者が多い図書館はいいかもしれないが、
レベルの高い利用者が多いかどうかは別問題だし。
海外では、もっとハイレベルの教育がなされる。
図書館司書も学芸員も大学院卒以上のレベルでないとなれない職種で、
ほとんど研究者レベルだ。
それと比較すると日本の養成カリキュラムは非常に貧弱だから、
簡単に資格が取れるのだろう。
でも、グダグダ言ってないで資格が取れたのでまぁ良しとしよう。

実は、来年度から資格認定の規定が変わる。
上記の説明は今年度末までしか通用しなくなるのだ。
詳細は文部科学省のページに掲載されているから
学芸員資格の取得を狙っている人は要チェックだ。

2011年6月27日月曜日

蝸牛会茶会、オルメカと名フィル定期演奏会


今日はとても文化的な1日だった。
それも和洋の古今伝統文化の。

まず、いつも花車茶会でお世話になっている某お方からのお誘いを受け、
蝸牛会茶会へ出席した。
この茶会は若手の古道具屋有志3名が企画したもので、
名古屋美術倶楽部の即売会開催に併せて開かれた茶会だ。

開催時期が梅雨時ということで、
「かたつむり」から取った名称の茶会。
今回の趣向は牛頭天王・夏場の厄祓いというテーマに沿ったものになっていた。
 このお茶会は濃茶と薄茶をいただく。
私はお茶を習ったことが無い上に濃茶の席は未経験だ。
図書館で借りて本を読んだが、
始めから終わりまで通しでの雰囲気がよくわからない(本では大抵「茶事の中の濃茶」として取り上げられている)。
そこで、NHKビデオの裏千家のものを借りてきた。
このビデオは茶会に招かれた初心者のための学習ビデオだから結構分かりやすい。
濃茶は・・・正客と連客のそれぞれの作法が流れで分かる。
薄茶とは違ってよりフォーマルな感じだ。

で、今日もいつものメンバーと出席。
一番空くと思われるお昼の時間帯に矢場町駅で待ち合わせ。
会場は名古屋美術倶楽部の3階。
12時40分からの部に入れてもらい、
時間までは2階の骨董品の即売会の会場を見物。
買えるような値段のものは一つとしてないから見てるだけ。
これいいなあ~と思うものは大抵高い。
ちらっと見た中では650万円の楽茶碗があったな。
ほとんど10万円以上のものばかりだったような。
だから、3万円くらいのものがあると「安い!」と思ってしまう。
 時間になり、寄付へ集合。
ここで、会記を拝見し、この会の成り立ちや趣旨の説明を受ける。
その後濃茶席へ。
幸い、同じ席に超ベテランのお師匠様のような人がいたので
なんとなくその方が正客の席へ。
今日は何が何でも正客は無理なので一安心。
濃茶席は牛頭天王・夏の厄払いの趣向に沿って、
仏式のイメージの取り合わせとのこと。
なるほど、お軸や風炉先屏風などそんな感じだ。
作法は・・・ちょっと間違えた(そもそもよくわかってないし)。
でも、形ばかりにとらわれていると楽しめないから、
周りの方に迷惑になるようなミスだけはしないよう注意した。
初めての濃茶・・・私はやっぱり薄茶の方がおいしいなあ。
ただ、この雰囲気は薄茶席とは違うものだからこれはこれでいい。
お茶を練っているところが見えなかったのが残念。
私が座っているところと炉の中間点に席主が座られたので
丁度死角になってしまったのだ。
 続いて、茅の輪(この趣向もニクイ)をくぐって薄茶席へ。
こちらは神式での取り合わせになっていた。
お床の飾りもそのイメージにぴったり。
ちゃんと葦もあったし。
いつもは4畳半の茶室だから、大広間での茶会はこれが初めての体験。
隣の人と肩がぶつかることもなくゆったりと座ることができるのは気楽でいい。
しかし、狭い茶室ならではの一体感というか緊張感が薄れるのは残念なところだ。

お菓子は全て川村屋さんのものだった。
干菓子は今回の趣向に合うように型から作ってもらったとのこと。
さすがに気合いの入り方が違う。
お誘いいただいた某お方にいろいろお話を聞き、
また勉強になったことも多かったな。
興味を持っていろいろ見聞きしていくことによって
茶会の楽しさも増えてくるのだろう。



その後仲間と別れて名古屋市博物館へ。
今日まで開催の古代メキシコ・オルメカ文明展を観るためだ。
タダ券を貰っていたのにいろいろ忙しくて今日になってしまった。
最終日は込み合うことが多いので、
入場に並ぶような状況だと嫌だなあと思っていたところ、
予想ほど混雑していなかった。

これらの文明は全部スペイン人により侵略され潰されてしまったんだよなあ~
と思うと切ない。
ゆっくり観たいところだったが、
16時から名フィルの演奏会チケットを貰っていたので
慌てて観てから急いで金山へ行く。

市民会館へ行くのは久しぶりだ。
名フィルのコンサート自体も久しぶりだ。
5年ぶりくらいか。
貰ったチケットは4階4列目・・・。
行ってみて分かったのだが、
4階の4列目とは一番後ろの席なのだ。
これ以上の後ろの席は無い。
今まで2階席で聴いたことはあったがここまで後ろの席は初めて。
天井がやけに近い。
でも、タダで貰ったチケットだし文句は言えない。
 今日の演目はチャイコフスキー。
あまり好みではなさそうな演目だが、
名フィルと言えば一流の楽団。
その音を楽しむことにする。
いつも行っている友人の奥さんの楽団とは雲泥の差だ。
まあ、名フィルはプロで友人のところはアマチュアだから当たり前だけど、
このスーッとまとまった音はなんだ。
同じ楽器とは思えないいい音を出している。
さすがだなあ。
4階席でも結構いい音で聴くことができた。
坂本龍一が名古屋でコンサートをするときはいつもここだが、
それはこのホールの音がいいからだろう。
 名フィルは春に常任指揮者が代わり、
今日はそのお披露目にもなっていた模様。
指揮者の挨拶があった。
アンコールも1曲。
私はアンコールの曲の方が好みだった。
蛇足だが、
パンフレットの注意書きに
「~ブラボーは控えましょう」というのには笑ってしまった。
クラシックの演奏会に行くと、
必ず「ブラボー!!」と叫ぶオヤジがいる。
それも、それを言いたいために来ているのか、
演奏が終わると間髪入れずに叫ぶ(拍手が始まるより前に言うことが多い)。
本当にブラボーと言える演奏なの?と思えるときでも。
余韻を楽しみたい人にとってはオヤジの大声は迷惑以外の何物でもない。
そのオヤジは「ブラボー」を歌舞伎の「○○屋!」という掛け声と同じだと勘違いしているのだと思うが、
それは全く別物だ。
本当に素晴らしい演奏で感動したときだけにして欲しい。