2011年1月16日日曜日

ナゴヤの古墳の魅力にせまる!「歴史の里」トークイベント

 9年ぶりの大雪の1日ではあったが、「歴史の里」トークイベントへ行ってきた。
事前申込に申込をし、抽選で400名が入場できるという名古屋の志段味古墳群をテーマとした考古学の講演会だ(私はめでたく当選した)。

 会場は名古屋市中区の中区役所ホール。
私は開演の20分くらい前に入場。
そこで、見晴台遺跡の発掘でお世話になっている学芸員のH氏と会った。
H氏はこの会の運営スタッフとして忙しそうにしていた。
聞くところによると、
400人の定員のところに600人の応募があったため200人にお詫びをして断ったとか。
しかし、当日は大雪・・・多分100人弱くらいの人が来ていないだろう。
今日は満席とアナウンスがあったが、私の両脇の席は空いていた(私は前から10列目の席)。

 今日は出演者が素晴らしい。
この古墳の発掘に国立歴史民俗博物館教授・総合研究大学院大学教授の広瀬和雄氏、俳優で日本考古学協会会員の苅谷俊介氏、NPO法人ニワ里ねっと理事長の赤塚次郎氏の3名だ。
私は特に苅谷さんの話を聞きたかったために応募したのだ。
苅谷さんは強面の個性派俳優。石原軍団の一員として活躍してきたという異色の経歴の持ち主。
詳しくは公式サイトを→ http://www.tutibutai.com/index.html

講演の題目は「古墳に感じる歴史ロマン」。
内容は、

①ご自分の経歴や考古学関連活動の話

②自分の体は縄文人の特徴をよくあらわしているということ

③「記録なきところ、墳墓これを語る」という言葉について

④日本が経済最優先という方針で来たために文化的に貧困になってしまったということ

⑤三位一体の社会(日常生活・文化遺産・自然)について

⑥今こそ物質至上主義を改め、意識改革をするときがきていること

自分は考古学愛好家ではあるけれども、キャリアがあまりないから講演をするような立場の人間ではないとおっしゃった。
苅谷さんは30歳過ぎに本格的に考古学とかかわり、本業の俳優業の合間を縫って考古学を研究されてきた。
だから、実質10年くらいしか考古学に携わっていない計算になるとか(現在63歳)。
話慣れているようで講演はとても面白かった。いろんな具体例を盛り込んだ話だから分かりやすく、なるほどと思うことばかりだ。

 日本は長い歴史がある国、中国も長い歴史がある国。
しかし、アメリカは歴史が300年弱という若い国。日本は長い歴史があるのだから、それを捨てるのではなくて大事にしていくべきではないのか?
経済最優先のために自然や我が国固有の文化的なものを全部捨て、
その結果唯物世界観が形成されてしまったがこれでは豊かな人間性は育まれない。
命の尊さ、心の育成・自然との共生等精神面の充実が強く叫ばれている中でこの物質本位になりすぎた現代人は意識を変えねばならない、というような話が後半の中心だった。
確かにそうだ、いつの間にかお金をたくさん持っている人が偉いということになった世の中。
金さえあれば何でもできると考える人が増え、
自分さえよければ何でもよいと考える人が増えてしまった。
物質的には豊かもしれないが、心が貧しい人が多いことはとても残念なことだ。
昨今はセレブがもてはやされているが、本物のセレブってどれだけいることやら。

 今回は名古屋市守山区にある志段味古墳群を歴史の里として保存する構想の中心に据えた講演会だ。
苅谷さんは考古学を愛する者として、ここ志段味古墳群が歴史公園として保存されることは大変素晴らしいことだと喜ばれた。
が、まだこの古墳群を歩いたことが無いらしい。
私もまだだ(公園整備もまだされていない)。
実際のところ、まだ発掘中で「分からないことが分かった」というような段階だ。
ここの古墳群は、古墳時代(現在は3区分する)のすべての時代の古墳が存在しているところが貴重で、保存状態もよい。
これが街中だと開発のために破壊されるところだが、
ここは郊外(それも結構丘陵地帯)だから歴史の里として保存することになったのだろう。
いずれにしても、これだけ貴重なものが保存されることはイイ。
苅谷さんが発掘に参加した奈良県桜井市の考古学的に大変貴重な古墳も、
奈良県の圃場整備という理由で埋め戻されたことがあるとか。
もうそろそろ破壊じゃなくて残すという方向で行こうよ、と思わず本音を漏らされた。

おっと、そうそう。今回の参加者は平均年齢が50代後半だと思うが、
その一部の方のマナーがなってないのが非常に残念だった。
まだ講演が終わっておらず、出演者も全員舞台の上にいる段階なのに
堂々と帰るじじーが何人もいたことだ。
そのタイミングで帰っても、ちゃんと終了までいて帰っても1分くらいしか違わないのに。
舞台の上からは丸見えだから、出演者は感じが悪いはずだ。
いくら無料の講演会だとは言え、マナーは守って欲しい。
最近、どんなコンサート(クラシック)や講演に行っても、終演間際にさっさと帰るじじーがいる。
コンサートの前に指揮者が曲の説明をしていたところ、バンバン手を叩いて「早く聴きたい!」と怒鳴ったじじーがいたこともある。
年取ると自分が偉いと勘違いする人がいるのか・・・。
これまた非常に残念なことだ。